もいんもいん!

「もいん」とはもとは北ドイツのおはようという意味です。

BS1スペシャル ノーベル文学賞作家 アレクシエービッチの旅路

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『BS1スペシャル ノーベル文学賞作家 アレクシエービッチの旅路』


102歳のご老人に「長生きし過ぎた」とか言わせるなよ・・・・。
ひたすらつらかった・・・。

社会主義であれ資本主義であれ国家は似たようなもの。国家は人間の命に対して完全な責任を負わない。」

以下、番組から。アレクシエービッチと福島の被災者との対話を記します。
私の書いたメモをもとに、私のニュアンスをまじえての文なので、実際の言葉遣いなどとは異なり正確ではないです。


小高の元高校の校長談「4月12日、フクイチが爆発したせいで、20km圏内で津波で流された人には救助がなかった。あの日、圏外でさまよっていた人(おそらく高校生)は圏内の人々の助けを求める声を聞き、その声が耳についてはなれない。助けられた命があったんじゃないか。」(この方は圏外だったので生きて帰ってこれた。圏内の人は置き去りにされた)
アレクシエービッチ談「放射能は農民の生活を奪った。でも生き抜かねばと言う元農民の菅野えいこの生命力に心打たれた」

飯館村前田の区長、元酪農家 長谷川談「牛を50頭飼っていたが、出荷制限で牛の乳を搾っては棄て搾っては棄てた。その後、牛は殺処分。一頭一頭に全部思い出がある。4世代8人で暮らしていた。孫は牛にも行ってきますと挨拶をしていた。家族は皆、避難している。公共に設置された線量計(モニタリングポスト)は研究者が持ち込んだ線量計より低く設定されいるので、研究者と同じ線量計を買った。5年間家の近くを毎日測り続けた。モニタリングポストは実測の半分の数値。行政は絶対食べちゃダメだと言わない。食べていい物だけ言う。チェルノブイリのゾーンに見学に行った。」

長谷川から酪農の道具を譲り受けた佐藤ケサヨ談「隣の酪農家が2011年6月11日、”原発させなければ”と遺言を残し自殺した。彼も牛の乳を搾っては棄てた。しかも牛舎を改築し、借金があった」
アレクシエービッチ談「私は思いました。社会主義であれ資本主義であれ国家は似たようなもの。国家と役人たちは国家と自らの救済にいそがしい。人間を救うのではなく。人々はそれぞれ孤独に苦難を耐えているのかもしれない。しかし、皆がそうはゆきません。彼にはできなかった。それに私がフクシマで見たのは彼ばかりではなかった」

-文雄の場合
久保文雄(享年102歳) 飯館村で最高齢だった。
文雄の笑った写真(遺影)
アレクシエービッチ談「陽気な方だったんですね」
文雄の家に嫁いだ大久保みえ子は南相馬市の避難先のアパートからこの家まで通い続けている。
大久保みえこ談「4月11日、飯館が避難区域指示の発表になった時、文雄は”ちょっと長生きし過ぎたな”と言った。夕飯を食べに起きてきた時に、お出かけ用の服を着てきた。”お前は飯館を出るのか? 俺はどこにもいかねえ”と言ったその夜、先立たれた妻の嫁入り道具のタンスにひもをかけこの世を去った。文雄の無念を晴らしたから取材を受けた。自害やひっそりと死んでいくのは恥だと思っている人が多い中で、文雄が102歳まで必死で生きてきた証はどこにあるんだろう、102歳まで生きてきたのがゼロになるのではないだろうか、それはつらいと思った。」
アレクシエービッチ談「より多くの人がこの事を知る必要があります。そこに抵抗の力も生まれます。なぜ彼らは絶望して首をくくらねばならないのか。チェルノブイリとフクシマのような大事故は2度しか起きていないから、どのように抵抗すればいいのか人々には経験がない。あの人たちは社会から切り離され、のけもののようにされています。被災を逃れた人々は”あの人たちも兄弟、同じ人間だ、これは自分の身にも起こり得たのだ”と実感できない。多くの人にとってチェルノブイリやフクシマは医学や経済の数字に過ぎない。しかしあの人たちにとっては”生命”そのものなのです。チェルノブイリとフクシマの文化を創らねばなりません。新しい知を 新しい哲学を。私はフクシマでチェルノブイリと同じ感覚を抱き続けました。私は過去を見ているのではなく未来を見ているのだと」

―外語大の講演会にて
アレクシエービッチ談「フクシマとチェルノブイリは同じ感覚を抱いた。国家は人間の命に対して完全な責任を負わない。最低限の保障をし、あとは好きにしなさいです。社会における抵抗のなさに驚きました。私たちの社会もそうですが、あなた方の社会には”抵抗の文化”がありません。これは私たちの国では全体主義国家という問題と不可分でしたが、さてあなた方の国はどうなのでしょうか。残念ながら人間は未来ではなく過去にすがろうとします。人は古き良き時代に思いをはせます。こういう日本がかつてあったと。トランプ大統領誕生も、失ったあの偉大なアメリカを人々が欲したのです。そして過去に守ってもらいたがる。過去は救ってくれない。”自”他”という区分けは過去のものとなり機能しません。人々は未来を恐れています。過去とは似ても似つかないものになる。それがわかっているから未来を恐れる。孤独でも”人間であり続けるしかない。それ以外にあなたをこの世界で守ってくれるものない”。一人一人の真実の叫びによって私たちが何者かを理解するのです」