もいんもいん!

「もいん」とはもとは北ドイツのおはようという意味です。

オットーくん2 第5話『夢泥棒とオットーくん』

『夢泥棒とオットーくん』

今夜も何千、何億という人々が眠りにつき、夢を見ます。チカさんもその一人です。チカさんは体が不自由なのでとりわけ楽しい夢を見る事を楽しみとしておりました。飛んだり跳ねたり、サッカードイツ代表の一員となってチームメイトのクローゼさんとの不埒な夢を見たり、大好きなスキーをする夢など見ておりました。

ところが、いつの日かそれらの楽しい夢が見られなくなり、チカさん自身も憔悴し切って行きました。

オットー君はいろいろなところを旅をしてきた経験からか、これは夢泥棒の仕業だと直感しました。夢泥棒とは人の見る楽しい夢を奪って喰って生きている人のことです。
大変だあ、このままではチカさんは狂って死んでしまう! とオットー君はチカさんを助けるためにチカさんの夢に入ってみることにしました。

するとやはり夢泥棒がいました。
「なんで君はそんなことするんだい? チカさんは体が不自由なんだよ、夢くらい楽しいものをみせてやりなよ」とオットー君。
「そんなの関係ないね」と夢泥棒。
よく見ると夢泥棒は黒い布をかぶっていました。
オットー君は思いきってその布をまくってみました。
すると、中にいたのはあの空の上に住んでいた、以前、オットー君と一緒に住んでいたその人でした。
「ああ、あなたは」
「オットーくん・・・」
オットー君は驚き、空の上の人はとても悲しい顔をしました。
「僕は、オットー君が地上に行ってチカさん夫婦のやっかいになってから、楽しい夢なんて見ていないんだよ、チカさんこそ、僕の夢泥棒さ。だからチカさんの楽しい夢を奪ってやったのさ」と空の上の人は力なく言いました。
オットー君はとても悲しい顔をしました。
それを見て空の上の人もとても悲しくなりました。
空の上の人はチカさん夫婦と、チカさんが天寿を真っ向するまでオットー君を天界に連れて行かないという約束をしていたのでした。
「ごめんよ、オットー君、君がそんなに悲しい顔をするなんて・・・。もうわかったよ・・・」と言って天界の人はチカさんの夢から出て行きました。

オットー君とチカさんが目覚めると2人とも泣いていました。
「オットー君が夢泥棒を追い払ってくれたんだね、オットー君もつらかっただろうに、どうもありがとう」
とチカさんはオットー君を抱きしめました。

その日からチカさんはまた楽しい夢を見ることができるようになりました。
しかし、オットー君はどことなく物思いにふける日々を送るようになりました。