もいんもいん!

「もいん」とはもとは北ドイツのおはようという意味です。

オットーくん 第2話

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

 雲の上の世界では、ただ一人の住人であるサングラスをかけたひとが自分が存在したときに生を謳歌しようと決意しましたが、さすがにひとりきりの生活に飽きてタピオカ入り抹茶ミルクをすすりながら物思いにふけっていると、煙とともにオットセイのオットー君が現れました。
そのひとは驚きました。
オットー君は斜めに傾いていましたが、つぶらな瞳と鼻が天使のようでフォルムもこちらの瞳と胸がとろけるようでそのひとはオットー君がすぐに大好きになりました。
その日から雲の上でオットー君とそのひとの二人の生活が始まりました。

 そのひとただ一人だけの生活も充実したものでしたが、二人になるとそれはそれはとても楽しいものでした。
オットー君は料理が得意で、何を作らせても上手でとてもおいしです。オットー君はシュークリームとドーナツが大好きでよく作りました。
オットー君にギターの弾き方を教えるとすぐに覚え、これまた上手に弾き、二人で楽しく連弾しました。
春にはお花見、夏には流しそうめん、花火大会、バーベキュー、秋には運動会、ハロウィンパーティ、冬にはクリスマス、鍋、と二人でイベントを楽しみました。

 そのひとはたまにどうして自分はここに存在しているのだろうと考えましたがオットー君は大好きな料理をしていれば満足でした。
 オットー君はしゃべることができませんでしたが、意志の疎通は十分にできました。そのせいでそのひとにはいつまで経っても名前というものがありませんでした。
自分では神様かなあ、と少し思っているようです。

しばらくすると、そのひとは胸が張るのを感じ始めました。
奇妙に思い、胸をさわってみると、なんとおっぱいができていました。

オットー君をなでながら驚いていると、オットー君がおっぱいを吸い始めました。なんと母乳まで出て来たのでした。

「そうか、僕は女だったのか」
とそのひとは思いました。オットー君が来たから女になったのかな?とも思いましたが、
「まあ、どうでもいいや」と思い直しました。

 そんなある日、二人はサッカーごっこをしていました。そのひとはボール蹴り、オットー君はゴールキーパー役です。そのひとはボールをつい強く蹴り過ぎ、ゴールの上を遥かに超えてしまいました。オットー君は一生懸命ボールを追いかけました。
ボールは雲の端っこです。オットー君はずいずいボールに近づきます。
そこでようやくそのひとは事の重大さに気がつきました。
「オットー君は傾いてっから、端っこにいっちゃだめだ!!」

時、すでに遅し。

オットー君はまっさかさかに地球に落ちて行きました。

「オットーく~ん」

そのひとの悲痛な叫び声が世界を木霊しました。

 この広い地球のどこに一体、オットー君は落ちてしまったのでしょうか。
初めはすぐに拾える、すぐに見つかるとかなり楽観していましたが、事はそう簡単にはいかず、それはとても不可能のことのように思えて来ました。

こんな大変なことになるとは思いも寄らず、そのひとは途方にくれ、毎日泣いてくらしました。

 
つづく