もいんもいん!

「もいん」とはもとは北ドイツのおはようという意味です。

オットーくん 第4話

 さて雲の上のあのかわいそうなひとはオットー君がいなくなってからすっかり食欲がなくなって弱ってしまいました。それまでは食べることがとても好きだったのに。こんなにひとりの食事は味気ないものだったっけ? とせつなくぼそぼそと間に合わせの食事をしておりました。オットー君が来るまではひとりでとる食事もおいしかったのに。
いかにオットー君の存在が自分にとってかけがえのないものだったか思い知りました。
「僕さえボールを遠くに蹴らなければ・・・」
とそのひとは日々後悔していました。
がんばってオットー君を探しに行こうと地球を見ますが、その距離のおそろしいことといったらありませんでした。でもある日、こうやって泣いて暮らしていたってしょうがない、オットー君は死んじゃいないんだとようやく決心して地球に下りることにしました。助走をつけて勢いにまかせて落ちてしまおう! それ、いち、に、の、さーーーーーーーー・・・ん・・・。
そのひとはびょーんとまっさかさかに地球に落ちて行きました。

 雲の上にいたあの人は地上に降り立ちました。
茫漠とした広い地球にめまいがしました。
一体、この広い地球のどこにオットー君がいるのでしょうか。
とにかく探すことにしました。

季節は冬です。半袖のTシャツ姿なのでそのひとは寒さと飢えを感じ何か食べようと思いましたが、お金がありません。
親切そうな人を探し、「すみません、おなかがすいているのですがお金をもっていません。500円めぐんでくれないでしょうか」と言ってみますが怪しまれることが多く、なかなかめぐんでもらえません。
背広を来たおじさんにいきなり
「この不良こじき! 働け! 冬にサングラスなんかかけんな!」
と怒鳴られそのひとは突然のことに目に涙を浮かべました。通行人がじろじろそのひとをみます。
オットー君・・・。と、オットー君との雲の上の生活を思い出し空を仰ぎました。雲の上に帰れば、食べ物に不自由しないんだけど。それとこじきに不良も不良じゃないのもあるのかな? あと、サングラスは雲の上にいた名残だ。雲の上はまぶしいからサングラスが必要なんだ。と思い、サングラスをはずそうとすると、やっぱり、日本の冬もまぶしくて驚きました。すっかり視力が退化していたようです。冬のサングラスは怪しい人に見られることがあるということを知りました。でも僕にはサングラスが必要なのだ。人の鋭い視線に耐えよう、お腹が減ってもオットー君を見つけるまでは帰らないんだ! と誓いました。

その人は日雇いの仕事を探して、一生懸命肉体労働をしました。
お金がたまると職場を変えてオットー君を探し続けました。

ある日、その人はマンガ喫茶に行きインターンターネットをしました。もちろん、オットー君を検索するためです。オットー君はオットー君なのです。『オットー君』と検索すると出て来ました!!
たかはしチカさんがブログを書いていて、そこの家にオットー君がいるというのです。たかはし夫婦はドイツの片田舎に住んでいるとのことでした。

そのひとはますます仕事をがんばり、ドイツへの旅費を稼ぎ始めました。


つづく