もいんもいん!

「もいん」とはもとは北ドイツのおはようという意味です。

意訳シリーズ第2回『ロキの口論』その4

ノルウェーアイスランド神話『エッダ』のロキの口論(松谷健二:訳 ちくま文庫より)

その4 

ロキ「そういうおめえが貞淑な妻の鑑(かがみ)だったらな。でもあいにく俺はトールの妻を寝取った男を知っておるのでな。知ってるのも何もその男ってのはこの俺様なのら!」

ベイラ「あら、山がふるえます。トールがいらっしゃるわ。神々と人々に悪態をつくならず者をきっと黙らせてくれるでしょう」

ロキ「うるせー、ベイラ!ビュグヴィルの女房、性悪女め、神々の国におめえほどの化物はいねえよ、下女!全身糞まみれ!!」

そこへトールが現れた。

トール「ほざくな、ろくでなし。これなる鉄槌ミエルニルでその口をぶち割って首を叩き落としてやる! ぶっ殺すぞ、このヤロー!!!」

ロキ「ほほう、ばかでかいのがきたな、何をそんなに力んでいるのだ、オーディンを飲み込む狼と戦うときには小さくなるくせに」

トール「ほざくな、ろくでなし。これなる鉄槌ミエルニルでその口をぶち割ってやる!巨人の国に投げ飛ばしてやるわ!」

ロキ「おめえ、巨人の国に旅したことは人前で言わない方がいいぜ。巨人の国だと思っていたのが巨人の手袋の中で、おそれおののいていたとはな! ビビリめ」

トール「ほざくな、ろくでなし。これなる鉄槌ミエルニルでその口をぶち割ってやる!この右手の鉄槌でおめえの骨をこなごなにしてやるわ」

ロキ「いくらおどかしても、こちらは長生きをするつもりよ。巨人のスクリューミルの締めた革紐が解けなくて兵糧が出せず、病気でもないのに、腹が減ってふらふらになったのはどこのどいつだったかな」

トール「ほざくな、ろくでなし。これなる鉄槌ミエルニルでその口をぶち割ってやる!この右手の鉄槌はおめえを冥府へ叩き落としてやるわ!」

ロキ「今まで言いたい放題いってきたこのロキ様だが、トール殿だけには遠慮しようか。本当に戦う大将だとわかったから。エーギルさんよ、おめえさんはせっかくエールを作ったが、もう二度と酒宴を持つこともあるまい。世界の終りが近いからな。おめえさんの財宝は燃えてしまえ。おめえも焼かれてしまえ。みんな死刑! みんな死んじまえ!!」

その後、ロキは鮭に化けて、フラーンアングの滝つぼに身をひそめたが、神々に捕えられ、自分の息子のナリのはらわたで縛りあげられました。

もう一人の息子のナルヴィは狼に変えられました。

スカディは一匹の毒蛇をロキの顔の上あたりにゆわえつけ、顔に毒滴がしたたり落ちるようにしました。ロキの妻シギュンはそこに座り、皿に毒滴を受けた。皿がいっぱいになると中身を捨てに行きました。
すると彼ははげしく身をよじりました。そうすると大地も震えました。

これが地震と呼ばれるものです。

おわり