もいんもいん!

「もいん」とはもとは北ドイツのおはようという意味です。

映画『グエムル -漢江の怪物- 』

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【ネタバレあります】

映画『グエムル -漢江の怪物- 』
これは怪物パニック映画に留まらない傑作でした。さすが『殺人の追憶』のポン・ジュノ監督。展開もスピーディ。
警察、軍が全く動いてくれないので、冴えないダメ一家が結束して姪っ子兼娘、ヒョンソを助け出そうとする家族奮闘物語! そして必然的に怪物退治も彼らが担う事になる。ぺ・ドゥナはオリンピック選手なんだけど、最後にとちるという苦い経験がある。その上の兄貴は大卒だが、韓国民主化運動においてデモで尽くすがフリーターの身。元デモ参加者というのが、あとで利いてくるのだが。

この一家の絆の深い事。
初め、死んだと思われていたかわいい姪っ子のヒョンソを悲しんでおじ(パク・ヘイル)が兄(ヒョンソの実の父、ソン・ガンホ)のせいだとがつがつ蹴る。おばのぺ・ドゥナ、祖父、みんなで文字通り仰向けになって号泣する。韓国のこういう所、すごいなあ。

また、イケメン、パク・ヘイルのがさつな三枚目の演技にしびれる。こういうのもできるのね。リアルなおじ像。

ソン・ガンホが居眠りしている間、父が弟と妹に「こいつも苦労してるんだ、こいつが足りないのは幼い頃、栄養不足で脳に栄養がいきわたらなかったからだ」みたいなちょっといい話をするのだが、二人はこっくりこっくり居眠り始めたり、笑えるシーン多数で出血大サービス。

一家に懸賞金がかけられて、通報した奴が「懸賞金は非課税?」と聞いたり。それ、大事よね。

ヒョンソを探している間、家族で食事をするシーンではカップラーメンを用意して、ちゃんと蒸れるのを待つ。(笑)
その前から、みんなでヒョンソ、お腹空いてないかなと心配していた。そのみんなの思いが具現化し、架空のヒョンソにご飯を黙ってあげるシーンにはうるっと来た。

ソン・ガンホが米軍か、CDCか、WHOかなんかの、寄り目の白人(これ、わざとなのかな、映画パトレーバーの竹中直人が声をやってる奴っぽい)に「なんで娘が生きてるって言わないんだ、メディアとかさー、いろいろ方法があっただろ、おまえの一家は馬鹿か」と言われる。はい、、この一家、知恵はないけど、熱意、絆はすごいんです。

なんで、隔離施設の外で米軍、バーベキューやってるの。
ソン・ガンホ「見世物か」と。(笑)

緊迫したシーンのあとにすさまじいギャグがあったり、とてもよい家族映画だった。クライマックスで武器落としたり。また、反米、反権力を感じたし、何より冴えないダメ一家が怪物を退治するというのもとても良かった。
もともと2000年に在韓米軍が大量のホルムアルデヒドを漢江に流出させた事件をヒントにしているという。ひでえな。
また、映画『WXIII機動警察パトレーバー』と酷似しているとの指摘もあるが、怪物は似ていなくもないが、ストーリーは全く別物である。むしろ警察敵だから。

クライマックス、残念ながらヒョンソは死んでしまう。これが怪物を退治する必然になっていると思う。ヒョンソが生きていたら、別に一家が怪物を殺さなくてもいいし。

ラスト、「ウィルスはなかった」と言うテレビをソン・ガンホが足で消すのがいい。