オットーくん２ 第１話『ナスとオットーくん』
オットー「あれ？ コンバンハ！ ぼく、オットーくん。君は？」
ナス 「（オットー君をいちべつして）僕は茄子だよ」
オットー「それはわかってるよ。君の名は？」
ナス 「名前はないんだよ」
オットー「どうして？」
ナス 「明日になればわかるさ、さ、もうあっちに行きな」
オットー「君はどうしてそうそっけないのさ、君はどこから来たの？」
ナス 「君は質問が多いな。スペインだよ」
オットー「スペイン！ 僕は行ったことないよ、どんなとこ？」
ナス 「なんだか太陽さ。それだけさ」
オットー「うーん、よくわからないなあ」
ナス 「明日になればわかるさ」
オットー「明日？ 明日何があるのさ」
ナス 「君と一緒に住んでいるたかはし夫婦の明日の晩飯は麻婆ナスさ」
オットー「それって君を食べちゃうってこと？」
ナス 「・・・」
オットー「君ともっとお話したいよ」
ナス 「それは無理だね」
オットー「食べられるのを待ってるの？」
ナス 「僕はこの通り手も足もないからね」
オットー「僕がチカさんに頼んでみるよ」
ナス 「・・・」
ナス 「君は僕の兄貴は助けなかったね」
オットー「君のお兄さん？ ひょっとして今日、トマトとパスタになっちゃたひと？」
ナス 「そうさ。君は僕を助けようとはしても僕の兄貴は助けなかったね」
オットー「だってまさか君が話せるとは思わなかったし、君のお兄さんは話せなかったし・・・」
ナス 「そうやって助けるものと助けないものを餞別するのはエゴだね」
オットー「・・・」
ナス 「君だってお魚食べるだろ。それだってどこかの誰かにとっちゃペットなんだ。君の仲間だって粉にされてどこかのオヤジに飲まれてるのさ」
オットー「！！！」
ナス 「誰にも誰かに何を食べちゃいけないなんて言う権利なんてないのさ」
オットー「でも、人は人を食べないよ」
ナス 「そんなの知らねえよ。何が食べ物で何が食べ物じゃないとか、人間と動物の違いなんてものもわからねえよ」
オットー君は一夜限りのその茄子の知人の名を知る事はありませんでした。
