もいんもいん!

「もいん」とはもとは北ドイツのおはようという意味です。

意訳シリーズ第2回ノルウェー・アイスランド神話『エッダ』のロキの口論

ノルウェーアイスランド神話『エッダ』のロキの口論(松谷健二:訳 ちくま文庫より)

その1

ギュミルとも呼ばれる海神エーギルは大きな釜を手に入れて、神々をもてなそうとホップなしのビールのエールを醸造しました。
その酒宴には大勢の神々と妖精たちも出席していました。ここは争いの許されない場所でした。
エーギルにはフィマフェングとエルディルという二人の従者がいました。
神々はエーギルの従者の有能ぶりをほめたたえましたが、ロキはそれが気に入らず、フィマフェングを打ち殺してしまいました。

神々は楯をかざしてロキを森へ追い込んでから宴席に戻りました。しかしロキも戻ってきて神々のいる広間に入りました。

ブラギ「ロキ、おめえの座る席などないど」

ロキ「オーディン北欧神話の主神)、義兄弟の誓いをしたっていうのに、俺がいねえのにエールを飲もうってのか」

オーディン「ヴィーダル(オーデインの息子)よ、ロキの席を作ってやれ、エーギルの広間で悪態つかれても困るからな」

ヴィーダルはロキに酒を注ぐがロキは口をつけずに言った。

ロキ「栄えあれ、神々に。栄えあれ、女神たちに。ブラギは別だがな」

ブラギ「ロキ、貴様に俺の馬と剣と腕輪をやるから黙ってろ」

ロキ「ブラギ、貴様は馬も剣も腕輪も持ってないだろうが、この中で一番弱いくせに」

ブラギ「なんだと、ここがエーギルの館でなかったら貴様の首をはねてやるところよ」

ロキ「けっ、口だけ男め、ウジ虫」

ブラギの妻、イドゥン「ブラギ、ここでロキをののしるのはおやめなさいな、あんたたち義兄弟でしょ」

ロキ「うるせー、イドゥン!この世の女の中でおめえほど色情魔はいねえぜ、雌豚サセコ。兄を殺した男までも咥え込みやがって。どすけべ女!」

イドゥン「ここエーギルの広間でロキをののしることはいたしませんわ。ただ酒に酔ったブラギの気を静めてるだけですの」

ゲフィヨン「お二人とも何をそんなに争っておられるの?ロキったらいやがらせばかりして。神々が嫌いなのね」

つづく